許可を要しない軽微な変更について
令和5年の改正時に、軽微な変更により、例えば新しい無線機が使用できるタイミングについては
届出が「到達」したときということを当局が明確にしました。
記載の内容は条文の中身を含めて変更になっているのでご注意ください。以下は、過去の記録として残しておきます
-------------------------------------------------------------------------------
標記の件について、ご存じない方が多いことを知り、備忘がてら記載してみたいと思います。
これを私が知ったのは、2011年のことでした。同年10月末に技適機を購入し、増設の変更申請(⇒実際には変更届なのですが)を提出後、とあるMLに「技適機を購入したので、変更申請がOKとなったら、QRVします」という趣旨の書き込みをしました。
その際、ある方から「技適機の増設は、「軽微な変更」ですから、「遅滞なく届け出」ですみます。つまり、買ってきたらすぐに電波を出してもかまいません。」とのご示唆をいただきました。さらに、「隈部さんの場合、ハイパワーだから、その後にリニアアンプを接続するという書類を出すのでしょうか、これも軽微な変更扱いなので、届け出ですみます。」とまで。
早速、条文にあたってみると、確かに「許可を要しない軽微な変更」にあたり、「遅滞なく届け出」れば良い。つまり、「変更をした後遅滞なく、変更をしたことを総務大臣に届け出る」ということでOKだということがわかりました。
最初は、技適機の増設やリニアアンプの追加(もちろん免許の範囲内のものです)が遅滞なく届け出ることで良いという理解でしたが(実際、これにより、技適機を1台・リニアアンプ2台の追加をしています)、この規定は次々と出てくる新しいデジタル・モードの追加についてもあてはまります。
過去に許可されている電波の型式・周波数・出力の範囲内であれば、上記のように軽微な変更として、遅滞なく届け出ることでOKですが、次のような方はご注意ください。例えば、過去にF1D(JT65など)の許可を得ていない場合、QRA64やFT8を軽微な変更扱いで追加することはできないと思います。F1Dの申請をしたことがなく、はじめてJT65を申請する場合などは、きちんと変更申請をしていただくべきです(その場合も、変更検査を要しない変更として、許可がおりるはずです)。
(注)一括コードの範囲内でコードに変更がなければ届出で良いとのご指摘がありましたので、修正(削除)しました。履歴を残しておきます。
電波法のたてつけを振り返ると、「A.許可を要する変更」と「B.許可を要しない変更」があるということになります。それぞれの流れは、
A.許可を要する変更
①変更申請を提出
②変更許可通知書の受領(変更検査の有無も記載)
③(②で変更検査を要する場合)変更検査
という順番で、許可(検査が必要な場合、検査を経て)を得て、はじめて変更した設備を使用できる。
B.許可を要しない変更
①変更届を提出(で終わり)
そもそも、許可が不要なので、許可を得ずに変更できますが、変更したことは当局に通知しておくことが必要(変更届に瑕疵があれば、補正(追加書類の提出や修正)が発生しますが、届出書を完結させる作業にすぎません)
たとえば、すでに6mでJT65(F1D)の許可を受けているならば、同一のF1Dの型式のデジタルモードを追加する場合は、「B.許可を要しない変更」で良く、モード追加後に、変更したことを遅滞なく届出れば良いということになります。
届出は、「不備なく当局に到達」したときに、手続き上の義務を履行したことになります。
電子申請した場合、送付すると直後に到達と表示されると思います。あとは不備がなければ、受付処理中⇒審査中⇒審査終了となりますが、そもそも到達時点で届出をしたアマチュア局としては、すべきことは終わっていたのです。
また、不備があれば、「補正」を求められると思います。「補正」をしないと、事後届出が完結しないことになります(不備なく到達していないので)。ただ、事後届出ですから、補正中であろうが、電波を出していても、法令上の問題はありません。
結論だけ先に記載しておくと、以下は(他にもありますが)変更後に届出ることで足ります。
・既存の送信機を200W以下の技適機に取り替え
・200W以下の技適機の増設
・電波の型式・空中線電力の指定事項の変更が生じず、周波数の指定も変更が生じない場合で、20Wを超える送信機の部品にかかる変更の工事(デジタルモードの追加やすでにリニアがある無線機に並列的にリニアアンプを追加するなど)
(注)移動する局の場合、すぐに運用できるのだろうか?というご指摘がありました。移動しない自局を前提に記載していますのでご承知おきください。移動する局の場合も、変更自体は許可を要しない変更であることには変わりありませんが、運用時に無線局免許証票を備え付けなければいけませんので(電波法施行規則第38条第3項)、例えば、技適機の増設といえども、証票の到着は待つ必要があると思います。
私の場合ですが、この変更届を出した場合には、「指定事項の変更を伴わない軽微な変更の工事に該るため、新たな免許状は不要です」と備考欄に記載しています。いちいち、審査終了を待って、内容が同一の免許状を何度もいただくのも無駄なので。ただ、先方の事務作業的には、免許状を受け取ってもらった方がありがたのだ、とも仄聞しています(もしかすると、機械的に免許状が作られてしまうのでしょうか?それを要らないというので面倒なのかもしれません(よくわかりませんが))。
一応、条文をたどっておきます。
まず、電波法です。第17条に変更申請・変更届関係が記載されています。
(変更等の許可)
第十七条
免許人は、無線局の目的、通信の相手方、通信事項、放送事項、放送区域、無線設備の設置場所若しくは基幹放送の業務に用いられる電気通信設備を変更し、又は無線設備の変更の工事をしようとするときは、あらかじめ総務大臣の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる事項を内容とする無線局の目的の変更は、これを行うことができない。
一 基幹放送局以外の無線局が基幹放送をすることとすること。
二 基幹放送局が基幹放送をしないこととすること。
2 前項本文の規定にかかわらず、基幹放送の業務に用いられる電気通信設備の変更が総務省令で定める軽微な変更に該当するときは、その変更をした後遅滞なく、その旨を総務大臣に届け出ることをもつて足りる。
3 第五条第一項から第三項までの規定は無線局の目的の変更に係る第一項の許可について、第九条第一項ただし書、第二項及び第三項の規定は第一項の規定により無線設備の変更の工事をする場合について、それぞれ準用する。
第17条ですが、
第1項では、変更の工事は、あらかじめ(要は事前に)総務大臣の許可を受けなければいけない、という原則を記載しています。
第2項(プロをイメージすれば良いですが)、第1項では事前の許可が必要となっているけれども、軽微な変更に該当するとき、変更をした後に届け出れば良い。
第3項で、法第9条第1項但し書き・第2項・第3項は、変更の工事にも準用するとなっています。
我々に意味があるのは、この第3項です。従って、法第9条を見てみます。
(工事設計等の変更)
第九条
前条の予備免許を受けた者は、工事設計を変更しようとするときは、あらかじめ総務大臣の許可を受けなければならない。但し、総務省令で定める軽微な事項については、この限りでない。
2 前項但書の事項について工事設計を変更したときは、遅滞なくその旨を総務大臣に届け出なければならない。
3 第一項の変更は、周波数、電波の型式又は空中線電力に変更を来すものであつてはならず、かつ、第七条第一項第一号又は第二項第一号の技術基準(第三章に定めるものに限る。)に合致するものでなければならない。
4~6(略)
第9条は局を開設するときの予備免許後の変更後の条文ですが、これが変更にも準用されています。
第9条の本文では、やはり予備免許後の工事設計の変更は許可が必要としながら、但し書で、軽微な変更はその限りではない(=許可が必要ではない)としています。
そして、第2項で、第1項但し書きに該当する場合(軽微な変更で許可が不要な場合)、変更したときは、遅滞なく、変更したことを総務大臣に届け出なければいけないとしています。
軽微な変更であれば、事前の許可は不要であり、事後に変更した旨を総務大臣に届け出ればよいということが法律の条文からわかります。
一方で、何が軽微な変更にあたるかは、この条文だけではよくわかりません。何が軽微な変更にあたるのかは、総務省令=電波法施行規則に規定されています。
電波法施行規則の第10条に軽微な変更についての記載があります。
(許可を要しない工事設計の変更等)
第十条
法第九条第一項ただし書の規定により変更の許可を要しない工事設計の軽微な事項は、別表第一号の三のとおりとする。
2 前項の規定は、法第十七条第三項において法第九条第一項ただし書の規定を準用する場合に準用する。
3 (略)
規則第10条第2項を見て頂ければわかりますが、法律の第17条3項で法9条第1項ただし書きを準用する場合、同じ規則第10条の第1項を準用するとなっています。
つまり、変更の場合で、変更許可が要らない場合というのは、第1項の規定と同じですと。
そこで、第1項を見ると、変更の許可を要しない場合は、別表第1号の3のとおり、と。
では、別表1号の3を見てみると、アマチュアには関係ないプロの事項を含めて、変更の許可を要しない軽微な変更にあたるものがたくさん記載されているのですが、本記事で意味があるのは、「その他総務大臣が別に告示する工事設計」としてある部分です。
実は、さらに、告示で規定する事項というのがあり、そこで変更の許可を要しない軽微な変更を定めてあるというのです。
さて、それでは、その告示を見てみましょう。
「許可を要しない工事設計の軽微な事項」
電波法施行規則別表1号の3・・・・の規定により、許可を要しない工事設計の軽微な事項を次のように定める。・・・・
1 アマチユア局の設備又は装置の工事設計の全部又は一部分について変更する場合(設備又は装置の全部又は一部分について変更の工事をする場合を含む。)
工事設計のうち軽微なものとするもの
1.空中線電力 200 ワット
以下の送信機の工事設計
適用の条件
当該部分の全部について、適合表示無線設備に係る工事設計に改める場合
若しくはこれを追加する場合又は総務大臣が別に定めるところにより公示する者による、
総務大臣が別に定める手続に従つて行つた法第3章の技術基準に適合していることの
保証を受け
た送信機に係る工事設計に改める場合若しくはこれを追加する場合
(新たな工事設計と
して追加する場合を含む。)
2・3 (略)
4,空中線電力 20 ワット
を超える送信機の部品に係る工事設計
適用の条件
(1)略
(2)次に掲げる条件に適合する場合
(1) 電波の型式又は空中線電力の指定の変更に伴う場合でないこと。
(2) 周波数の指定の変更に伴う場合(中略)でないこと。
となっており、要は、1つ目の方は、技適機への送信機の変更とか、新規増設
2つ目はリニアアンプ等の追加とか、デジタルモードの附属装置の変更などで、2つ目の適用条件に、電波の型式とかパワーの指定事項の変更がないことなどが条件として記載されています。
(注)適用の条件にはまるかどうかに、当局の裁量の余地があるのではないかというご指摘がありました。それはその通りです。ただし、技適機の増設などは明確で、裁量の余地もないと思いますし、前例が蓄積されているようなものは、ある届出に関してだけ条件に適合しないとも言えないので、気にする必要はないと思います。微妙なものは、個別に確認された方が良いと思います。例えば、リニアアンプの追加で、プレート損失10kWの真空管アンプを追加するとなれば、「空中線電力の指定の変更を伴いかねない」ものとして、「軽微な変更の適用条件を満たさない」と判断される可能性が大であり、逆に、許可を得てから変更検査を受けるのが自然と思います。こうした判断要素が残るものは慎重に対応された方が良いと思います。
これらを簡単にまとめると、本文の中段あたりに結論を記載した内容になります。
不要に電子申請などの審査終了待ちをしている方があるので、ご参考までに条文を検証しました。
ちなみに、こうした処理で理解に誤りがないことを、技適機の増設については2011年に、リニアアンプの追加については2011年と2016年に、デジタルモードの追加については、2013年あたりと2016年に、いずれも関東の総通に確認しております。
なお、技適機の追加だけであれば軽微な変更ですし、既存の1kWの設備に並列的に1kWのリニアアンプを追加するのも軽微な変更ですが、技適機+1kWリニアの1セットを一挙に増設すると軽微な変更にはあたりませんのでご注意を。軽微な変更を2段階でやれば変更検査は不要です。一挙にできないのは、技適機の増設が軽微となるのは、200W以下の場合だからです。古い無線機+1kWの設備を技適機+1kWに変更するには、まず技適機を単体で増設。その後に、免許されている「古い無線機+1kWリニア」のリニアを技適機種にも共用する形にする(技適機種からみるとリニアの追加)。その後、古い無線機を撤去すれば、技適機+1kWリニアの設備に鞍替えが可能です。
最近のコメント